「運動ブーム」の中でも、特にトレーニングや筋トレへの抵抗感は、ひと昔前を考えたら、うんとハードルが低くなった印象です。
毎日のようにテレビやメディアで紹介される、らくらく!カンタン!たったこれだけダイエット!…では、「カラダは変わらない!」
そこにようやくみんなが気づきだした、ということですね。
さて、私のパーソナルセッションのメインはフリーウェイトトレーニングです。
「フリー」じゃないのが、マシントレーニング。
マシントレーニングは、ケーブルなどで重りの軌道が決められ固定されています。
どこに立とうが座ろうが、どう持とうが重りの動きは決まっています。
では「マシン」ではなく、フリーウェイトトレーニングとは…
例えばダンベルやバーベルです。
重りの軌道が、どこにも固定されていないから「フリー」です。
ダンベルやバーベルでのフリーウェイトトレーニングは、1回1回の軌道を安定させるため、そしてフォームを崩さないために全身の多くの神経や筋肉が総動員で使われます。
正しいフォーム、正確なフォームはターゲットの筋肉に的確に効かせるため。
安定した正しいフォームと、ていねいさを重視することで、ターゲットとなる筋肉への負荷が逃げず、的確に効かせることができるのです。
また、筋肉を傷めないため、関節を傷めないためにも正確なフォームの習得は必須です。
反動は使わず(意図して反動を使う場合もあります)筋肉の収縮、伸展。ていねいに引き伸ばします。
まずは重さにこだわらず、フォームの安定を重視します。
フォームの安定とは、つまり重心のこと。
動作中、重心感覚がなく、フォームが不安定で定まらないようではトレーニング効率は悪いということです。
重心感覚が身につけば、マシンでのトレーニングの質も向上し、フリー、マシン、どちらの利点も理解し使い分けができるようになりますね。
1.いちばん大切なのは軸
ゴツいだけの上腕二頭筋も、うすっぺらい厚みのないカラダも、それはゴールなのかもしれません。でもカラダが本来もつ機能、という面から考えるとあまり意味はありません。
ターゲットはここだからと姿勢も気にせずなんとなくダンベルを振り回していてもカラダの機能としては向上しない、ということです。
まず大切なのは筋力を鍛えるよりも動作の質です。
また、立つ足幅は何センチ、つま先の角度は何度…でもありません。
その人の可動域、柔軟性、筋力によっても正しいフォームはひとりひとりちがってきます。
脊柱の動き
ターゲットの筋肉がどこであっても身体のどこを動かすにしても、その部位だけが動くのではなく、その動きをするためにまず脊柱が動きだします。
脊柱が反応し身体がその動きをするための準備をするのです。
ターゲットマッスルとしては表記されていない脊柱に関与するたくさんの小さな筋肉(深層筋)が、まず身体のバランスをとるために働きます。
どんなメニュー、どの部位がターゲットでも脊柱がかならず関与するということです。
初動はまず脊柱から、そして多くの筋肉や関節が連動して働くのです。
表面の筋肉がそれらしく動いていればいい?それでは本来の目的とする「身体を変える」ことはできません。
深層部の筋肉の動きを意識することで、柔軟性、姿勢を維持するための安定性、前後左右のバランスをとる平衡性が生まれます。
なんとなくマシンで決められた軌道で動かされているだけでは的確にターゲットに強い刺激を受けるのは難しいということがわかります。
脊柱の正しい動きや骨盤の位置、そして重心の軸や軌道にこまかくこだわることからはじめます。
フリーウェイトはすべての重さを自分で支えるため、ケガのリスクが高くなります。
いきなり欲張ったウェイトを扱うのではなく、まずは自重から。
脊柱のどこに重心(重さ)があり、それは立位のメニューであれば足裏のどこで捉えているか…
では、体幹部の筋肉の安定性の強化に最適な
スクワットとデッドリフトについてです。
2.スクワット
まずは「自分なりのスクワットをやってみて」と声かけし、動いてもらいます。
すると、ヒザを曲げ伸ばしするだけの動作をする人がほとんどです。
スクワットの動作は、
「肩にかついだバーベルと床にはさまれ、バーベルの重さで折りたたまれていく」というイメージです。
その動作の結果として「ヒザが曲がってしまうだけ」です。
ヒザは関節であり、重さを支えるような強い大きな筋肉はありません。そのヒザに重さがすべて乗るようなまちがった動作は、ケガのリスクの高さが想像できますね。
また、肩にかついだ重いバーベルの重心が、動作の度に前や後ろにゆらゆらブレるなんて…
それもとんでもないことです。
もちろん、ダイエットのための自重スクワットでも、重心感覚はとても大切です
ぐらぐら前後に重心が動くことはNGです。
ビギナーさんへの声かけには
「子供を肩車してるつもりで」と声かけしています。怖い思いさせないように…と思えば、前後にぐらぐら、しないように支えるはずです。
ポイントとしては、
動作中はずっとお腹のチカラ(腹圧)を抜かないこと。
立ち上がるときは、足裏全体で地面を押し、おしりの穴を締めるような感じを意識するといいでしょう。
体幹部のチカラを抜かないことで軸がブレません。
また、かかとにしっかり重心をのせることで、お尻をターゲットにすることもできます。
理解して使い分けできることが大切です。
足裏にかける重心をすこし変えるだけでターゲットが変わるのです。
その微細な調整をするのが足首。
上体を倒したり起こしたりしてフォームを調整しようとしてはいけません。
3.デッドリフト
主にカラダの背面の筋肉がターゲットになります。ハムストリングス、お尻、腰背部、脊柱起立筋群、上腕三頭筋…
自分から見えない部分のトレーニングであり、シルエット、ビジュアルの印象を大きく変える部分のトレーニングです。
私は、足幅は骨盤と同じくらいかそれより狭いくらいになるように、とお伝えしています。
足幅を狭くすればするほどハムストリングスへの負荷は強くなります。
ここでも大切なのはバー(重り)が重心であること。膝頭や足裏の前部、拇指球がバーの下に常にあることです。
動作の準備としてはまず、肩甲骨、二の腕が後ろから引っ張られているような状態をキープすること。
背面が、凧揚げのタコのように、ずっと後ろからピンピン引っ張られているように想像してもらっています。
胸は張り背中にアーチができた状態になります。動作中ゆるめることはありません。
反り腰の骨格の方には容易な体勢ですが、過伸展による脊柱への負担を軽減するために腹圧はしっかり入れておきます。
重心はバー(重り)です。
バーの重みで自然に骨盤が前傾してしていく。
その動作の過程でバーは下方に引っ張られるのであって、下ろしていくという意識ではありません。
下ろす、という意識に移った途端、後ろに引いていた肩甲骨は緩んで開いてしまいます。
ほんの少しの集中力の切れ目でカラダは大きく反応します。
次は、前に倒した骨盤を引き込みます。
骨板を立てるときは中途半端に戻すのでななく
きちんと引き込むこと。
これはケガのリスク回避です。
この間も重心はずっとバーの軌道上にあります。
そして、微細な重心の調整は上体を倒したり立てたりして調整するのではなく、やはり足首です。
スクワットやデッドリフトでみられる、反り腰にまかせたキツすぎるアーチは、ターゲットマッスルに効かないだけでなく、過伸展になっているだけです。
可動域の限界まで反る必要はありません。
それは常に腰痛のリスクを抱えているようなもの。柔軟性と過伸展はちがいます。
腰痛予防のためにも、背骨の正しいカーブをクセづけていくことは必要です。
そのためにも姿勢をきちんと分析してくれるパーソナルトレーナーをもつことはオススメです。
例えばラットプルダウンなら、座面のどこに体重が掛かってるのか、そして動作の重心軸上にバーがあるか、軌道をチェックしてもらえるといいですね。